2017年12月12日火曜日

ナシーム・ニコラス・タレブ『反脆弱性』まとめのまとめ/図解

『反脆弱性』の主張を図を使ってまとめると、下記のようになる。



まず、確率を考える。横軸にある出来事(例えば株で連続で勝った/負けた回数)、縦軸に確率を取る。世間一般の認識では、少し勝ったり少し負けたりすることが一番多くて、極端に勝ったり負けたりはしないことになっている。だけれども、現実世界では下側のグラフにある通り、極端に珍しいことでも起こりうる。

なぜ? 上側のグラフは正規分布に基づいて、平均と分散をパラメータとして渡してあげないといけないのだけれど、このパラメータ推定がとても難しいから。例えば株価の分布を調べようとして、パラメータ推定のために過去50年のデータを使ったとする。でももしそこで、過去100年で最大の暴落が起きたら? 要するに、確率の推定には常にオーバーフィッテングの問題が付きまとう。深くは触れないけれど、推定にはかなりの精度も必要になる(特に分散)。世界を確率で正しく捉えようとするのは難しい。



次に、見返り(ペイオフ)。横軸にはやはり出来事を、縦軸にその見返りを取る。例えば株で勝ったときの勝ち幅が毎回一定ならば、勝ち幅の合計は、当然勝った回数に比例する(上側のグラフのように線形になる)。しかし現実は下側のグラフのように歪んでいて、勝者総取りの体をなしていることが多い。

なぜ? 線形の見返りというのが、とても原始的なものだから。例えば、2頭のライオンがいて、一方が他方より2倍優秀だとしても、だからといって2倍以上の獲物にありつくのはなかなか難しい。でも、ライバルよりも2倍面白い本を書ける小説家の儲けは、そのライバルの4倍以上になる(みんな、面白い方の小説家の本だけを買う)。10倍面白い本を書けるのであれば、その差は100倍以上になるかもしれない。こうして見返りは、出来事に対して不自然に大きくなっていく。



最後に、期待値。横軸に出来事、縦軸に期待値(確率×見返りの値)が取られている。世間一般では、平均的なよくある出来事からそこそこの得・損をするのが普通だと考えられている。しかし現実のところ、よくある出来事がもたらす影響は微々たるもので、稀に起きる出来事こそが大きな影響力を持っている。

なぜ? 勝者総取りの世界では、普通でいること(平均的でいること)に意味がないから。普通にいたとしても、取るものは全て勝者に取られているから、成果が期待できない。


で、どうすればいいの? 期待値のグラフ(現実世界)から導かれる方針は3つ。①左端の大きな損を全力で避けつつ、②真ん中の平凡な事象は相手にせず、③右端の大きな得を狙いにいく。

どういうこと? 言い換えると、①いかにあり得なさそうなことでも、もしそれが起きるとマズイのであれば、全力で保険をかけておく。②いかに頻繁にあることでも、その影響が限定的なのであれば、相手にしない。③稀な出来事でも、もしそれが起こるととても嬉しいのであれば、全力で相場を張っておく。総じて、物事の確率ではなく、その影響(見返り、ペイオフ)に着目する。



おしまい

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