著者は「詐欺を見て詐欺と言わないなら、その人自身が詐欺師である」という黄金律を掲げている。
反脆弱性という考え方を土台にして世界を見ると、明らかに不合理なのに世間では普通に受け入れられていることがいくつもある。それらを指して著者は詐欺だと言い、それらを告発している。
告発されている事柄は下記の通り。
- 確率・統計
- 被告人:統計的手法を証拠として使う学者
- 要点:確率や統計は現実世界を正しく捉えられていないのに、被告人は確率や統計を用いて金融や政策に口を出している。
- 例示1:確率1%の事象は、めったに起きないが故に正しく確率を推定できない。例えば、過去最悪の津波よりも最悪の津波がいつ来るかは、過去データがないゆえに予測ができない。
- 例示2:指数関数的な影響をもたらす事象では、2倍のズレが4倍の影響を引き起こし、3倍のズレが9倍の影響を引き起こす。よって最初のパラメータがズレていると議論が台無しになる上に、最初のパラメータ推定は根拠1のせいでとても難しい。シックスシグマはとても信用できない。
- 例示3:パラメータ推定ではシグナルとノイズの比率を考慮しなければならないのに、なされていない。
- (人体・伝統・子供への)過度な干渉
- 被告人:医者、製薬会社、先進国、教育ママ
- 要点:時代の試練を乗り越えて上手く回っているもの(主に自然)に下手に手を出してはいけない(否定の道)のに、被告人は手を出したがる。
- 例示1:過度な手術を行ったせいで、かえって死亡者が増えたことがあった(医原病/1930年台の扁桃腺摘出手術)。
- 例示2:製薬会社は自身の売上を伸ばすため新たな病気を開発(PTSD等)し、過度に干渉(=対象者を薬漬けに)しているように思われる。
- 例示3:教育ママが子供から失敗の機会を奪い、子供の脆さを助長している。
- 頭でっかち、口だけ、行動に移さない、身銭を切らない人間
- 被告人:ジャーナリスト、銀行家
- 要点:理論を世間に発信して利益を得ているのに、自分ではそれを実行していない人は脆さを人に押し付けている。
- 例示1:例えば金融ジャーナリストは好きなだけアイデアを言える。そしてそれがあっていても間違っていても、ジャーナリストに被害はない。給料はもらえる。それなのに、それを信じた一般の人々は損をしていることが多々ある。
- 例示2:金融危機が起きて銀行が公的資金で救済されても、銀行の人間は過去の給料もボーナスも返す必要がない。銀行の人間にはダウンサイドが殆どない。
- 相反する結果のいいとこ取り
- 被告人:ジャーナリスト、学者
- 要点:被告人はあれもこれももっともらしいことを言っておいて、何か事象が起きてから「ほら昔に私はそれを予測していたじゃないか」と言える。実際はその反対のことも言っていたのに、そのことは闇に葬られる。
- 例示1:学者はいくつかの実験を行い、自分にとって都合のいい結果が出た実験だけを取り上げて世間に発表することができる。
- 個人の利益と公共の利益のすり替え
- 被告人:銃のロビイスト
- 要点:被告人は、本当は自分の利益につながることなのに、さも公共の利益につながるように欺いている。
- 例示1:銃のロビイストは、銃の所有がアメリカにとって良いことだ、と主張したりする。でもそれは、本当だろうか。
- 「証拠がないこと」と「ないことの証拠」の取り違え
- 被告人:喫煙者
- 要点:被告人は「証拠がない」ことと「ないことの証拠」を取り違えて主張している。(特に自然への)干渉者は、自分の方が証拠を示さなければならない。
- 例示1:その昔、喫煙者は害があるという「証拠はない」という理屈を元に大きな顔をしていた。もちろんこれは、害が「ないことの証拠」があることとは違い、結局タバコの有害性は一般に知られることになった。
これらは『反脆弱性』の本筋からは外れているように見えるのだけれども、同時に著者が力を入れている部分のようにも思える。このトピックに興味のある方は、ぜひご自身で『反脆弱性』を開いていただければと思う。
この記事は、あくまで参考として。次の記事で、図解として『反脆弱性』をまとめてみようと考えています。
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